「観光の島」のジレンマ
定期的な投稿をするにあたって、初回のテーマをどうしよう、とか書き出しはどうしようとか、少しはまぁ考えますよね。ただ、”地方”や地域課題に関わるNPO職員がこのタイミングで取り上げるテーマとして、新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)を避けると逆に不自然な感じもしますので、堅苦しくなりそうですが、今回はその切り口でちょっとお話できればと。
コロナに対しての初動の受け止めについては、全国的な動きとあまり変わらなかった(過去形)と思います。
正月気分が少し抜けたころ、中国・武漢発のウイルスが広がっているというニュースが届き、日を空けないうちに感染が原因で亡くなった方の報道がされたのをきっかけに報道番組もコロナ一色になっていきました。その後、武漢封鎖やダイヤモンド・プリンセス号の船内感染が連日ニュースになっていましたが、その頃の小豆島内の空気は、”まだまだ遠いところで起こっていること”という認識で、マスクをしている人も少なく、行事・イベント等も行われていたように記憶しています。
その後は他地域と同様、日に日に増す危機感の高まりと同じくして、観光客が少なくなり、ホテル・旅館や店舗等の灯りが減っていき‥という感じで、緊急事態宣言が出た後の4月末から5月中のピーク期間においては、都市部ほど外出に関して自粛ムードは無かったですが、人と会う・接触回数を減らすという意識は島民にも行き渡っていました。
ピーク時から1ヶ月以上が過ぎ、全国的にも島内も地域経済復旧モードにはなりつつありますが、事業者さん店舗さん島民全てが「恐る恐る」です。
その理由、関係するポイントは4つあります。
①小豆島・豊島では感染者が出ていない
②島の高齢者が多い‥高齢化率が40%超
③島の医療体制‥コロナ患者の受入病床数は4床
④観光の島、のジレンマ‥昨年の来島者数は119万人という、島を支える大きな産業
このような状況で、島民すべてが考えるのが、「コロナ第一号になりたくない」です。当然私もそう思っています。
しかし、観光を戻す、GO TO キャンペーンをやるとなった場合、抗体検査の陽性率を照らしてみても、1000人来島したら感染リスクが高まるということになります。
もとの社会に元に戻そうとすると、感染者は出る。広がった場合、医療崩壊が置きてパニックに陥る、知っている人が感染して亡くなるかもしれない。これが島民が一番恐れていることです。
地方や島ぐらしにおいて、都市部の環境と大きく異なる一つが、「人と人との距離が近い」こと。地方移住のネットニュースやコラム等で良くも悪くも話題に上がるのが、この交流に関してですね。
私も島に来て、今まで知り合うことの少なかった年配の方の知り合いが増えました。NPOの仕事に就いてからは特にです。そういった知り合いへの感染リスクが高まるというのは、立場上はもちろん個人的な想いとしても絶対に避けなくてはいけない。同じような考えを多くの島民が持ちつつも、観光客にも戻ってきてもらわないと「観光の島」として生き残っていけないという、ジレンマを抱えているのが今の小豆島と豊島の状況です。
この先、どうなっていくか正直分かりません。
短期間で元の社会に戻るということは難しいですし、完全には戻らないかもしれません。
ただ、今回のコロナによって、大事なこと、大切なことに改めて気付かされました。
それらを一つ一つ紡ぎながら、自分なりの新しい明日、そして島の未来を築いていきたいというのが今思っていることですね。